香港の世界遺産と文化遺産を巡る観光ガイド(香港・マカオ・台湾の比較も)

香港の世界遺産と文化遺産を巡る観光ガイド(香港・マカオ・台湾の比較も)

はじめに:香港で世界遺産に出会える?

香港・湾仔地区にあるブルーハウス(藍屋)。1920年代築の唐楼(ショップハウス)で、住民ごと保存された再生プロジェクトが2017年ユネスコのアジア太平洋文化遺産保全賞「優秀賞」を受賞しました。香港の歴史的建造物保存の成功例として知られています。

Different Paths to Sustainability: A Roundtable of UNESCO Award-winning Heritage Projects from Hong Kong

香港は東西文化が交わる国際都市であり、近未来的な高層ビル群と古き良き街並みが同居する観光地です。

香港の世界遺産」と聞くと、果たして香港に世界遺産は存在するのかと疑問に思う方もいるでしょう。

結論から言えば、香港には現在ユネスコ世界遺産に正式登録された物件は存在しません。これは香港が国家ではなく中国の一部であり、世界遺産登録には中国本土からの推薦が必要となるためで、2025年時点でも香港からの推薦・登録は行われていないのです。

Lisa

えっ、香港って世界遺産ゼロなの?

スノーベル

そうなんだ。香港は中国の特別行政区だから、中国政府が候補にしないと世界遺産になれないんだよ。実は今のところ香港の候補は一つもないんだって

Lisa

意外!歴史的な建物いっぱいあるのにね。

しかし、世界遺産こそ無いものの、香港には世界遺産級に魅力的な文化遺産スポットが数多く存在します。

ユネスコから直接の世界遺産登録は無くても、ユネスコによる別の形の評価や、地元で大切に保護されている歴史的建造物や伝統文化が豊富に残っているのです。

本記事では、日本人観光客向けに香港および近隣のマカオ・台湾の世界遺産・文化遺産情報を網羅し、モデルコースやグルメ情報も交えながらわかりやすく紹介します。香港旅行のプランニングにぜひお役立てください。

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目次

香港・マカオ・台湾の世界遺産比較

まずは香港と周辺地域(マカオ・台湾)の世界遺産状況を整理してみましょう。実は香港と同様に台湾にも正式な世界遺産登録は無く、対照的にマカオには歴史的建造物群が世界遺産として登録されています。

スチュアート

以下の表にまとめました。

地域世界遺産登録の状況備考・主な文化遺産スポット
香港0件(正式登録なし)ユネスコ無形文化遺産:広東オペラ(2009年登録);ユネスコ・アジア太平洋文化遺産保全賞:21件受賞(例:ブルーハウス、タイオー警察署跡 etc);ユネスコ世界ジオパーク(香港世界地質公園、2009年指定)
マカオ1件(「マカオ歴史市街地区」2005年登録)聖ポール天主堂跡(大三巴牌坊)、媽閣廟(A-Ma寺院)、セナド広場など22の歴史的建造物群が構成資産。東西文化の交流を物語る街並みが評価。
台湾0件(正式登録なし)世界遺産未登録の理由:台湾はUN加盟国でないため。候補として18か所がリストアップ(例:太魯閣渓谷、阿里山森林鉄道、故宮博物院 等)されているが未登録。

表のとおり、香港と台湾にはユネスコ世界遺産は存在せず、マカオのみ「マカオ歴史地区」として旧市街の建築物群が世界遺産に登録されています。

スチュアート

台湾は政治的理由で世界遺産登録が叶っていませんが、香港の場合は中国国内での候補リスト(暫定リスト)にも香港からの物件は一つも載っていないのが現状です。

一方で香港にはユネスコ無形文化遺産に登録された伝統芸能や、ユネスコの文化遺産賞を受賞した保存建築が複数存在し、世界的に評価されています。

Lisa

また香港全域の大自然が育んだジオパークはユネスコ世界ジオパークに認定されており、広い意味での“ユネスコ遺産”は享受していると言えるでしょう。

次章から、こうした香港の文化遺産的スポットを具体的に見ていきます。

香港で訪れたい文化遺産スポット(歴史的建造物と街並み散策スポット)

香港には、市内の歴史的建造物から郊外の自然景観、伝統行事に至るまで、多彩な「文化遺産」的見どころがあります。

世界遺産ではないとはいえ、その土地の歴史や文化を体感できる貴重なスポットばかりです。ここではカテゴリー別に香港のおすすめ文化遺産スポットを紹介します。

香港には19世紀~20世紀の歴史的建築物が点在しており、いくつかは再生保存プロジェクトによって新たな観光スポットとして生まれ変わっています。

1920年代築の4階建ての古いアパート(唐楼)であるブルーハウス(藍屋)

スチュアート

代表的な例が、1920年代築の4階建ての古いアパート(唐楼)であるブルーハウス(藍屋)です。

1920年代築の4階建ての古いアパート(唐楼)であるブルーハウス(藍屋)

取り壊しの危機にあった建物を地域住民ごと保存・活用する取り組みが評価され、2017年にユネスコの「アジア太平洋文化遺産保全賞」最高賞(Award of Excellence)を受賞しました。

スノーベル

現在は1階が香港の生活文化を伝える小さな資料館「香港故事館」となり、地元コミュニティの拠点兼観光名所になっています。鮮やかな青い外観はSNS映えも抜群で、湾仔(ワンチャイ)エリア散策のハイライトにゃ。

大澳(タイオー)漁村にある舊大澳警署(Tai O Heritage Hotel)

ブルーハウス以外にもユネスコ遺産保全賞を受賞した歴史スポットが香港には存在します。例えば大澳(タイオー)漁村にある舊大澳警署(Tai O Heritage Hotel)は1902年築の警察署をホテルに改装した施設で、2013年に同賞の優秀賞を受賞しています。

Tai O Heritage Hotel
Tai O Heritage Hotel

大澳は水上家屋が立ち並ぶ香港屈指のノスタルジックな漁村で、香港の昔ながらの生活風景を体験できる場所です。

スチュアート

ホテルとして宿泊もできますが、日中はカフェや展示見学を兼ねて立ち寄ることも可能で、島全体がゆったりした時間の流れる観光スポットになっています。

中環(セントラル)にある大館(Tai Kwun)

また、中環(セントラル)にある大館(Tai Kwun)も見逃せません。

Tai Kwun
Tai Kwun

ここは旧中央警察署・中央裁判所・中央監獄という歴史的建物群を大規模改修し、2018年に文化芸術複合施設としてオープンしたものです。

西洋風の重厚なレンガ建築と中庭が美しく保存され、現代アートギャラリーやオシャレなカフェ・バーが入居しています。

スノーベル

大館はユネスコの賞も受賞しており(2019年の新デザイン優秀賞)、香港のコロニアル建築遺産の活用成功例として世界的にも注目されました。中環エリアの真ん中にありアクセスも良いので、ショッピングや街歩きの合間に立ち寄れるにゃ。

上環の文武廟(マンモウミュウ)

このほか、上環の文武廟(マンモウミュウ)は1847年建立の香港島最古の道教寺院で、派手な装飾と渦巻き線香が特徴的な霊験あらたかなスポットです。

文武廟

九龍側では黄大仙祠(1934年創建、道教寺院)も有名で、香港市民の信仰を集める寺院として観光客にも人気です。

スノーベル

さらに新界エリアに目を向けると、元朗には屏山文物径という伝統的な客家族の城郭村を巡るハイキングコースが整備されており、そこでは清代の祖堂や古塔など古い中国建築群を見学できます。

香港観光というと都会のイメージが強いですが、こうした歴史的街並み散策も旅程に組み込むと、香港の奥深い文化側面に触れることができるでしょう。

香港で訪れたい文化遺産スポット(ユネスコ無形文化遺産と伝統文化体験)

無形文化遺産とは建物のような有形のものではなく、伝統芸能や祭り・技術といった“形のない”文化財を指します。

広東オペラ(粤劇)

香港の無形文化遺産である広東オペラ(粤劇)

香港にはこの無形文化遺産がいくつか受け継がれており、そのうち代表的なものが広東オペラ(粤劇)です。

スノーベル

広東オペラは中国南部発祥の歌劇で、独特の音楽・歌唱と華やかな衣装、武術的な演技が融合した伝統芸能にゃ。

2009年にユネスコの無形文化遺産(人類の無形文化遺産)に公式登録されており、香港でも粵劇の上演や後継者育成が盛んに行われています。

香港文化センターや新光戯院(サンビーム・シアター)などで公演が行われているので、日程が合えばぜひ鑑賞を検討してみてください。言葉がわからなくても、カラフルな舞台衣装とライブ音楽、ダイナミックな演技だけで十分楽しめるはずです。

Lisa

無形文化遺産って建物じゃないのに世界遺産みたいに守られてるの?

スチュアート

そうそう。ユネスコが守ってるのは建物や自然だけじゃなくて、お祭りとか伝統芸能みたいな文化も対象なんだ。広東オペラなんかは香港や広東省で大事に受け継がれてて、世界的にも貴重だから登録されたんだよ。

銅鑼湾の大坑(タイハン)で毎年中秋節に催される大坑舞火龍(ファイヤー・ドラゴン・ダンス)

祭りでは、旧正月や中秋節に行われる伝統行事も香港の見どころです。

例えば銅鑼湾の大坑(タイハン)で毎年中秋節に催される大坑舞火龍(ファイヤー・ドラゴン・ダンス)は、長さ67メートルの龍に線香を無数に挿した「火龍」を大勢で舞い踊るもので、100年以上続く香港特有の伝統行事です(国家級無形文化遺産に選定)。

香港の文化遺産!銅鑼湾の大坑(タイハン)で毎年中秋節に催される大坑舞火龍(ファイヤー・ドラゴン・ダンス)
スノーベル

また、離島の長洲(チュンチャウ)で旧暦4月に開催される長洲太平清醮(パン祭り)も有名で、高く積み上げた饅頭タワーに若者がよじ登る勇壮な祭りは圧巻にゃ。

これらの祭りは日程が合えばぜひ体験したいですが、合わなくても香港の民俗博物館などで写真や資料を見ることができます。

スチュアート

街中でも旧正月時期なら獅子舞や新年飾り、中秋節前なら提灯飾りなど季節ごとの伝統文化の雰囲気を感じ取れるでしょう。

香港観光ではショッピングや夜景だけでなく、こうした伝統文化体験にも目を向けると旅が一層深みを増します。

自然遺産スポット:香港ユネスコ世界ジオパーク

自然遺産スポット:香港ユネスコ世界ジオパーク など

ビルが林立するイメージの香港ですが、実は大自然の宝庫でもあります。香港の陸地面積の約4割は郊野公園(カントリーパーク)など緑地に指定され手付かずの自然が保護されています。

スチュアート

その代表例が香港ユネスコ世界ジオパーク(Hong Kong UNESCO Global Geopark)です。

ジオパークとは地質学的に貴重な自然景観を含むエリアのことで、香港ジオパークは香港東部およそ150平方キロメートルにわたる広大なエリアが指定されています。

火山活動によって生まれた六角形の柱状奇岩が連なる高島や、海食によるアーチ状の崖など、ダイナミックな地形が点在しています。

スノーベル

2009年に国家ジオパークに指定され、2011年にユネスコの世界ジオパークに正式加盟しました。市街地から日帰りで行ける距離にありながら、まさに世界級の自然絶景を楽しめるスポットとして注目されているにゃ。

ジオパークを観光するには、西貢(サイクン)半島から出る観光ボートツアーに参加したり、一部陸路でトレッキングコースを歩いたりする方法があります。

現地ツアーを利用すると英語ガイド付きで効率よく奇岩スポットを巡れるのでおすすめです。特に人気なのは高島(High Island)の東壩地域で、高島ダム近くから柱状節理の崖や海食洞を間近に観察できます。

また糧船湾(ベースン湾)一帯では断崖絶壁が海に落ち込むワイルドな景観が広がり、カヤックで海から巨岩を巡るアクティビティも催行されています。

糧船湾(ベースン湾)
Lisa

香港の世界地図上で見ると、小さな地域に思える香港にこれだけ多様な自然が詰まっているのは驚きです。都市観光に加えて半日〜1日自然探検に出かけてみる価値は十分あります。

自然遺産という点では、香港には他にもビクトリア・ピーク(山頂)からの大パノラマや、南部のドラゴンズバックと呼ばれる稜線トレイルから望む絶景、離島ランタオ島の大仏(天壇大仏)と周囲の山並みなど、枚挙に暇がありません。

こうした風光明媚なスポットそのものは世界遺産ではないものの、「香港」という都市そのものが持つ魅力を語る上で欠かせない自然遺産的財産と言えるでしょう。

香港観光モデルコース:世界遺産&文化満喫プラン

最後に、上述したスポットを効率よく巡る観光モデルコースの一例を提案します。香港は比較的コンパクトなので、2〜3日あれば主要スポットを回れます。今回はせっかくなのでマカオ日帰りも組み込んだ3日間プランを考えてみましょう。

  1. 1日目:香港島で歴史散策と夜景
    • 午前中は上環〜中環を散策し、文武廟や大館を見学。途中、老舗の茶餐廳(チャーチャンテン)で香港式ミルクティーや菠蘿包(パイナップルパン)などローカルグルメを楽しむ。
    • 午後は湾仔へ移動し、ブルーハウスや周辺のレトロな街並みを散策。
    • 夕方には尖沙咀に渡り、シンフォニー・オブ・ライツ(毎晩20時の湾岸ライトアップショー)と共にビクトリア港の夜景を堪能。
  2. 2日目:香港新界で文化と自然を体験
    • 朝はMTRで新界エリアへ。元朗駅から屏山文物径を歩き、伝統的な村落建築群を巡る。
    • 昼食は元朗名物の煲仔飯(土鍋炊き込みご飯)に舌鼓。
    • 午後は西貢に移動して香港ジオパークの半日ツアーに参加。六角柱状節理など自然遺産を満喫。
    • 夕方に市街地へ戻り、九龍城あたりで蛇スープや**糖水(スイーツ粥)**など、ローカル感満載のディープなグルメにチャレンジ。
  3. 3日目:マカオ日帰り遠征
    • 朝イチの高速フェリーまたは港珠澳大橋直通バスでマカオへ(所要約1時間)。
    • 到着後、世界遺産「マカオ歴史市街地区」を徒歩観光。セナド広場から聖ドミニコ教会を経て、聖ポール天主堂跡(大三巴牌坊)へ。石造ファサードの荘厳な姿は必見。
    • ランチはエッグタルト発祥の地で本場のエッグタルトを味わい、ポルトガル風のレストランで食事を楽しむ。
    • 午後は媽閣廟やモンテの要塞を見学し、時間があればコタイ地区のカジノホテル群ものぞいて現代マカオを体験。
    • 夕方の便で香港に戻り、最後の夜はオープントップバスでネオンきらめく香港夜景ドライブを楽しむ。

上記は一例ですが、香港とマカオの世界遺産級スポットをバランスよく楽しむコースになっています。

スノーベル

日程に余裕があれば4日目以降に香港ディズニーランドやショッピングデーを加えても良いでしょう。

スノーベル

逆に時間が2日しか無い場合は、マカオを諦めて香港島と九龍の主要スポットに絞る形がおすすめです。

モデルコースを参考に、自分の興味に合わせてアレンジしてみてください。

おわりに:香港の遺産巡りで旅に深みを

香港 世界遺産」というキーワードからは意外な事実が見えてきましたが、世界遺産が無くとも香港は歴史と文化の宝庫であり、その価値はユネスコのお墨付き(無形文化遺産や受賞歴)にも裏打ちされています。

Lisa

近隣のマカオや、話題として触れた台湾も含め、東アジアの都市はそれぞれ独自の文化遺産を育んできました。

日本人観光客にとって香港はリピーターも多い人気旅行地ですが、次回訪れる際はぜひ文化遺産巡りの視点で旅程を組んでみてはいかがでしょうか。古き良き香港の姿や伝統の味わいに触れることで、きっと旅の思い出が一層豊かなものになるはずです。香港の奥深い魅力を存分に堪能してください。

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