
香港での起業や海外進出を検討中でしょうか?香港は世界有数のビジネス拠点であり、日本からも多くの企業や起業家が進出しています。



実は香港で会社設立するのは意外と簡単で、税制面など多くのメリットがあります。しかし、設立後の維持費用やビザの問題、日本の税制との関係など注意点も存在するにゃ。
本記事では、香港での会社設立に関するあらゆる情報を網羅しました。導入部分ではまず香港で起業する魅力を紹介し、その後に具体的な設立手続きや費用、維持費、ビザ、登記情報の調べ方まで詳しく解説します。
それでは、香港で会社を作るメリットから見ていきましょう。


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香港で会社設立をおこなうメリット
香港はビジネスのしやすさから国際的に高い評価を受けており、実際に日本企業の進出先として人気が高まっています。まずは香港に会社を作るメリットを整理しましょう。
経済的自由度が高い


香港は長年「経済自由度指数」で世界トップクラスに位置し、市場の自由度が極めて高いです。



行政の介入が少なく、ビジネス規制が少ないため、外資系企業に対する制約もほとんどありません。
税率が低く税制がシンプル
最大税率が法人税16.5%、さらに中小企業向けに最初の200万香港ドルまでの利益は8.25%と 超低税率 です。



消費税(GST/VAT)は存在せず、株式譲渡益や不動産売却益などのキャピタルゲイン非課税、海外で得たオフショア所得も基本非課税という特徴があります。
税制ルールが簡潔でわかりやすく、税務手続きの負担も軽減されます。
外資規制がほとんど無い
外国人が100%出資する会社を自由に設立可能で、許認可が必要な一部業種を除き事業目的の制限もありません。



18歳以上であれば国籍に関係なく誰でも会社設立ができます。外資企業だからといって現地で特別なハードルはなく、日本人でも現地法人をスムーズに立ち上げられるにゃ。
世界的な金融センター
香港はニューヨークやロンドンと並ぶ金融ハブです。


銀行口座の開設や資金調達の選択肢が豊富で、多通貨での資金運用も容易です。香港ドルは米ドルにペッグ(連動)しており通貨の安定性が高く、為替管理もありません。
世界中の投資資金が集まる環境でビジネスを展開できます。
中国本土やアジア市場へのゲートウェイ



香港は地理的・経済的に中国本土および東南アジアへの玄関口です。香港に拠点を置くことで、中国やアジア各国との取引や進出が円滑になります。
中国語(広東語・北京語)や英語が通じ、人材も多国語対応可能なため、周辺市場へのアクセスが容易です。
会社設立手続きが迅速・簡便
設立登記はオンラインで1時間程度で完了することも可能なほど手続きが簡単です(詳細は後述)。



資本金要件も実質ゼロに近く、定款も雛形が整備されているため、初めてでもスムーズに会社を作れます。
必要書類も最小限で、煩雑な手続きは専門業者に任せれば短期間で設立できます。
地理的・文化的に日本に近い
香港は日本から飛行機で約4~5時間とアクセスが良く、時差も1時間以内です。



サクッと日本と往復できるのは本当にメリットにゃ。
日本人の駐在員や起業家コミュニティもあり、日本語対応のサービスも充実しています。食文化や都市環境も比較的なじみやすく、海外の中では日本人にとって暮らしやすい環境と言えるでしょう。
もっとも、税金が低いことから香港は「タックスヘイブン(租税回避地)」と呼ばれることもあります。
ただし単に香港に法人を作れば日本の税金を逃れられるというものではありません。日本には海外子会社の利益を合算課税するタックスヘイブン対策税制(後述)があるため、節税目的で実体のない会社を作る場合には注意が必要です。



ここは意外とみんな知らないので必読です。
この点についてはペーパーカンパニーの維持費用の項で詳しく解説します。
香港で会社設立する方法・必要な手続き
メリットを踏まえて具体的に香港で会社を設立するにはどうすれば良いのでしょうか。
ここでは現地に新たに株式会社(有限責任の法人、いわゆる有限会社)を設立するケースを想定し、必要条件や手続きの流れ、設立にかかる費用などを解説します。
香港法人設立の主な要件と設立条件
香港で法人(Company Limited by Shares、株式有限責任会社)を設立する際の主な条件は、日本の株式会社と似ていますが一部異なる点もあります。以下の表に香港会社設立の要件をまとめました。
項目 | 内容 |
---|---|
株主 | 1名以上(個人・法人いずれも可、国籍・居住地は不問) |
取締役 | 1名以上(18歳以上で国籍・居住地不問。※少なくとも1名は自然人の取締役が必要) |
会社秘書役 | 1名必須(香港在住の個人、または香港に登記された法人が就任可能) |
登記住所 | 香港内の住所(バーチャルオフィス等を利用可。郵便箱は不可) |
資本金 | 最低資本金の規制なし(1香港ドルから設定可能)。登記時に全額払い込む必要はなく、設立後に払い込みできます(設立2か月以内が目安)。実務上はHK$10,000以上に設定すると銀行口座開設がスムーズです。また、授権資本額に対して0.1%の資本登録税が課されます(上限HK$30,000)。 |



会社秘書役って何なの、スノーベル?ただの秘書さんを雇うってこと?



にゃ。香港の会社秘書役というのは会社法上の必須ポジションで、単なる秘書とは違うにゃ。例えば政府への届け出や登記書類の管理を代行する役割で、会社を法律面でサポートする存在だにゃ。多くの場合、専門のサービス会社がこの秘書役になってくれるんだにゃ。
上記のように、香港では取締役1名・株主1名から会社設立が可能で、しかもその取締役・株主は日本在住の外国人でも問題ありません。
最低資本金も1ドルから認められており、日本のように資本金○○円以上という決まりもありません(極端な話、資本金17円程度でも設立できます)。
ただし、会社秘書役と現地住所だけは用意しなければならない点が、日本との大きな相違点です。



逆に言えば、秘書役と住所さえ確保できれば日本から出向くことなく香港に法人を作れるということでもあります。秘書役や登記住所は、後述する会社設立代行サービスに依頼すれば名義を借りることが可能です。
香港での会社設立手続きの流れ
香港法人の設立手続きは、日本の会社設立と似ていますが、オンライン申請が充実している点や商業登記(後述)が必要な点が特徴です。一般的な会社登記の流れと必要書類は次のようになります。
まず英語もしくは中国語で会社名を決めます(英語名は必須、中文社名は任意)。社名末尾には英語なら“Limited”、中国語なら“有限公司”を付ける必要があります。決めた社名が他社と重複しないか、香港会社登記所(CR)のオンライン検索で確認します。
定款(Articles of Association)を準備します。定款には会社名、事業目的、株式数や各役員の権限などを定めます。同時に設立時の株主・取締役を決定します。株主・取締役ともに上記のとおり1名から可能で、個人・法人や国籍の制限はありません。取締役は18歳以上であれば誰でも就任できます。
役員が決まったら、会社秘書役の選任も行います(秘書役も前述の要件を満たす人または法人から選ぶ)。必要書類として各株主・取締役の身分証明書(パスポート)と住所証明書(運転免許証や住民票など)のコピーを用意します。
会社登記所(Companies Registry)に設立申請を行います。これはワンストップで商業登記署(税務署)への商業登記(Business Registration)申請も同時に行う仕組みになっています。
申請方法は2通りあり、オンラインの場合はCRの24時間対応ポータルサイト「e-Registry」から電子フォームを提出できます。紙申請の場合は必要書類一式をハードコピーでCRに提出します。提出書類は以下のとおりです。
- 設立申請書(Form NNC1) – 株式有限責任会社用の定型申請書です。基本定款の要旨や会社名、初期役員・株主情報などを記載します。
- 定款(Articles of Association)のコピー
- 商業登記申請書(Form IRBR1) – 税務署への事業登録申請書です。
- 上記株主・取締役・秘書役の身分証・住所証明のコピー
- 登録手数料(後述する所定の政府登録料と商業登記料)
オンライン申請の場合、フォーム入力と電子ファイル添付、クレジットカード決済で一連の手続きが完了します。オンラインなら1時間以内で設立が承認されるケースもあります。書面申請でも、提出から通常4営業日以内に会社設立証明書が発行されます。なお、会社設立が完了すると同時に商業登記証(BR)も取得されます。
会社登記所が審査を終えると会社設立証明書(Certificate of Incorporation, CI)が発行されます。CIは会社の法人番号や設立日を示す証明書で、日本でいう「登記簿謄本に相当する会社設立時の証明書」です。
また、税務署から商業登記証(Business Registration Certificate, BRC)も発行されます。BRCは事業者登録を示す証で、会社の営業許可証のようなものです。どちらもPDFでオンライン入手でき、原本が必要なら後日郵送で受け取れます。
設立後は、初回取締役会の開催や株式証書の発行、会社印(社判)の作成などを行います。香港では会社実印・銀行印・ゴム印のセットが一般的で、「カンパニーチョップ」と呼ばれる丸印や角印を作成するサービスが含まれることも多いです。
また実際に事業を開始するには法人銀行口座の開設が必要となります。香港の銀行口座開設は昨今セキュリティ強化のため厳しくなっており、外国人が開設する場合は審査に時間がかかる傾向があります。
銀行によっては取締役本人が香港に渡航して面談する必要があるため、スケジュールに余裕を見て準備しましょう(代行業者が口座開設サポートを提供している場合もあります)。この他、必要に応じてオフィス契約や各種許認可の取得、従業員の雇用手続きなどを進めます。事業内容によってはライセンス登録など追加の届出が必要なケースもあります。



銀行口座はHSBCやDBSなどは確かに最初は少し開設が難しいんだけど、香港は銀行が充実していて、StatrysやTranswapから口座開設を始めるのもいいかもにゃ。決済系はStripeやAirwallexなどがいいにゃ。他にも探せばあるにゃ。粘り強くいくにゃ。
香港での会社設立手続きは簡便とはいえ、やはり海外での登記ですので細かい書類準備や現地語対応など不安もあるでしょう。
そのため多くの場合、会社設立の代行業者(コンサルティング会社)を利用します。こうした業者に依頼すれば、登記書類の作成・提出はもちろん、先述の会社秘書役や登記住所の提供もワンストップで対応してもらえます。



色々問い合わせてレスポンスをみて決めるのがいいにゃ。スノーベルは一番返信の早かったSleekにしたんにゃが、問い合わせてない先もあるので調べてみるのをおすすめするにゃ。
Virtual Office Providers in Central Hong Kong (with Accounting/Tax Services)
- OneStart Business Centre
- Profit Accounting Co. Ltd
- K&S Accounting Services Ltd.
- vOffice Hong Kong (CMA Business Centre)
- Asian Corporate Services (ACS)
- Twinsail Business Centre
- T8 Corporate Services
- HK Corporate Services Group
- 3E Accounting (HK) Ltd.
- Sleek Hong Kong (Digital platform)
費用はサービス内容によって異なりますが、後述するように総額で十数万円~数十万円程度が相場です。
多少のコストはかかりますが、専門家に任せることで手続き漏れなく確実に設立できるため、初めて香港進出する場合は代行会社の活用を検討すると良いでしょう。
支店・駐在員事務所と現地法人の違い
香港で事業を行う形態としては、今述べたように新しく現地法人(香港法人)を設立するほかに、「日本本社の支店を香港に登記する」方法や「駐在員事務所を設置する」方法もあります。それぞれの特徴を簡単に整理しておきます。
- 駐在員事務所(Representative Office) – 日本法人の駐在員事務所として香港に拠点を設ける形式です。駐在員事務所は香港で営利活動が認められておらず、あくまで市場調査や情報収集など非営業拠点としての位置付けです。そのため収益を上げたり契約を結んだりはできません。開設時には税務署への登録(事業開始から1か月以内の商業登記)が必要ですが、法人格を持たないため登記所への会社設立登録は不要です。主に将来の本格進出に向けた準備拠点として利用されます。
- 支店(Branch) – 日本法人の香港支店として事業所を登録する形式です。香港会社登記所(CR)にて外国会社の登記(branch registration)を行う必要があります。支店は営業活動が可能で現地で売上計上もできますが、あくまで本社の一部門という扱いです。支店の利益・損失はすべて日本本社の決算に合算されることになります。また支店開設時には、本社の定款や登記事項証明などをCRに提出し、本社の財務諸表を翻訳して毎年提出する義務があります。既に日本に本社があり確立したビジネスモデルを香港にも展開する場合に選択される形態です。
- 現地法人(Subsidiary Company) – 香港の会社法に基づき新規に法人を設立する方法です。前述した株式会社(有限責任公司)が該当します。現地法人は日本の本社とは独立した法人格を持ち、本社とは別会社として登記されます。メリットは何と言っても自由度の高さで、社名や事業内容も含め新しい会社として柔軟に設計できます。親会社は株主として出資する形になり、親子関係にはなりますが損益や財務は基本的に別管理です(※香港法人から日本親会社への配当には香港で源泉税がかからない利点もあります)。香港現地の低税率や簡素な会社法の恩恵を直接受けられる反面、後述するように毎年監査義務があるなど維持管理コストがかかる点には留意が必要です。日本企業の香港進出では、この現地法人を設立するケースが一般的です。
香港で会社設立にかかる費用・資本金
次に、香港で会社を設立する際の費用面について解説します。設立コストとしては(1)政府に支払う登記料・ライセンス料と、(2)代行業者などに支払うサービス料に大別できます。また資本金の考え方も日本と異なる部分があるので注意しましょう。
代行サービス料:実務的には、上記の政府費用に加えて会社設立をサポートする代行会社への手数料が発生します。代行会社の費用は提供サービスによってまちまちですが、一般的な設立パッケージには以下のようなものが含まれます。
- 名称重複チェック・登記申請書類の作成代行
- 会社秘書役(1年間)サービス
- 指定代理人(Significant Controller 登録のための代表者)1年間分
- 登記住所の提供(住所貸しサービス)1年間分
- 共有電話番号の提供(必要に応じて)
- 初年度の商業登記証取得代行
- 会社印(社判)セットの作成 など
こうしたフルセットを利用した場合、初年度のトータル費用はおおよそHK$10,000~15,000程度になることが多いです。
日本円で約17万~25万円前後のイメージです。例えば登記住所を借りるプランだと初年度HK$13,000前後(約22万円)、住所不要プランならHK$11,000前後(約18万円)という事例があります(プランにより差異あり)。



この費用には前述の政府登録料も含まれており、また1年間の秘書役・住所利用料も先払いする形です。
次年度以降は更新費用(秘書役・住所の継続と年次届出代行など)として毎年数千香港ドルがかかります(維持費については次節で詳説)。もちろん、代行会社を使わずに自分で全て手続きを行えばサービス料はかかりません。



ただし実際には非居住者が自力で現地登記するのはハードルが高いため、多くの方は専門業者に依頼しています。



まとめると、香港会社設立にかかる初期費用は最低でも数万円台半ば(自力で手続きする場合)、一般的には十数万円~二十数万円(代行フルサポート利用の場合)というイメージです。日本で会社を作る場合と比べても大差ないか、むしろ秘書役サービス込みで考えれば割安とも言えるでしょう。
香港法人の維持費用とペーパーカンパニー運営
香港で会社を設立した後、毎年必要となる維持費用についても把握しておきましょう。特に事業実態を香港に置かず登記だけしているいわゆる「ペーパーカンパニー」の場合、どの程度のコストがかかるのか気になる方も多いでしょう。
ここでは香港法人の年間維持コストの内訳と、ペーパーカンパニーに関する注意点を解説します。
年間で必要となる主な手続き・コスト
香港法人を維持していく上で、毎年決まって必要となる手続きと費用は主に以下のものがあります。
- 商業登記証の年次更新: 前述の商業登記(Business Registration)は毎年更新料を納付しなければなりません。有効期限が通常1年間のため、期限が来る前に税務署で更新手続きを行い、新しい商業登記証(BR)を取得します。更新料は現在毎年2,000香港ドル前後(約3万円)です。更新を怠ると罰金が科され、取引先との契約にも支障が出る可能性があるため注意が必要です。※3年分まとめて取得した場合は3年ごとの更新になります。
- 年次報告書(Annual Return)の提出: 会社設立記念日(設立日の応当日)から42日以内に、会社登記所へ年次報告書を提出する義務があります。年次報告書とは、会社の基本情報(住所や役員・株主構成、資本金など)の前年からの変動を報告する書類で、日本でいう「登記事項の定期更新」に相当します。提出時に年次申告料105香港ドルを支払います(期限超過時は罰金が段階的に増額)。年次報告書を提出すると、会社登記所のデータベース上に当該年度の情報が更新されます。
- 会計監査の実施と税務申告: 香港では全ての有限責任会社に対し、毎年の会計監査(監査役ではなく香港CPAによる財務諸表監査)が法律で義務付けられています。設立初年度は18か月以内に初決算を行い、その後は基本的に毎年一回決算期に合わせて監査を受けます。外部の公認会計士(監査法人)に財務諸表を渡して監査報告書を作成してもらう必要があります。また、決算後には税務署へ法人税(利得税)の申告を行います。香港税務署から届く確定申告用紙に必要事項を記入し、監査報告書を添付して提出します(利益が出ていなければ税額は0ですが、それでも申告は必要です)。加えて、従業員がいる場合は給与税の年次報告も求められます(従業員がいない場合はその旨の届出をゼロ申告します)。これらの監査費用・会計費用は会社の規模や取引量によって異なりますが、小規模のペーパーカンパニーでもゼロ監査で済むわけではなく、最低数千香港ドル(数万円程度)はかかります。
- 会社秘書役・登記住所サービスの更新: 秘書役や住所を外部サービスに依頼している場合、その年間費用の更新も発生します。先述の設立代行プランでは初年度分を支払っていますが、次年度以降も継続して依頼する場合は毎年契約更新料を支払います。相場感として、会社秘書役サービスが年間HK$2,000~3,600前後、登記住所サービスがHK$2,000前後です。これらは業者により異なりますが、ペーパーカンパニーの場合は自社で現地オフィスを借りないため必須のコストとなります。
以上を整理すると、ペーパーカンパニーの年間維持費はおおむね下記のような内訳になります。
項目 | 年間費用(目安) |
---|---|
商業登記証の更新(事業登録税) | 約HK$2,000(約3万円) |
年次報告書の提出(登記所申告料) | HK$105(約1,500円) |
会社秘書役サービス料 | 約HK$2,000~3,600(約3万~5万円) |
登記住所サービス料 | 約HK$2,000前後(約3万円) ※住所貸し利用時 |
会計監査・税務申告費用 | 約HK$4,000~(約6万円~)※取引量により増減 |
合計(目安) | HK$10,000以上(約15万円以上) |
※上記は小規模会社を想定した例です。実際の費用はサービスプロバイダの料金設定や会社の取引状況によって増減します。監査や税務申告費用は、取引のボリュームが多いほど高額になります。逆に全く事業活動のない休眠状態でも、年次報告書の提出とBR更新、秘書役維持は必須ですので最低限の費用は必ず発生します。
ご覧のように、香港に登記だけ置いておくペーパーカンパニーでも年間で少なくとも10万~20万円程度の維持費はかかります。これは例えばシンガポール等と比べると半額程度とも言われ、香港の維持費は比較的安い水準です。
しかし「0円で放置できる」わけではない点に注意してください。



では、このようなペーパーカンパニーを設立することで日本の税金を回避できるのでしょうか?結論から言うと、単に香港に会社を作っただけでは日本の課税を逃れることはできないにゃ。
日本には「タックスヘイブン対策税制(正式名称: 特定外国子会社合算税制)」という制度があり、親会社(または個人株主)が50%以上出資する海外子会社で税率が20%未満かつ実体経済活動がないと判断される場合、その子会社の利益を日本の株主の所得に合算して課税する仕組みがあります。香港の法人税率16.5%はこの基準を下回るため、実体のないペーパーカンパニーは日本側で課税されてしまう可能性が高いのです。



香港にペーパーカンパニーを作れば日本の税金も払わなくて済むのかな?



にゃ、それは甘い考えにゃ。日本にはタックスヘイブン対策税制というルールがあって、香港みたいに税率が低い国の会社でも日本で課税されちゃう仕組みがあるにゃ。
もし香港法人に実質的な事業がなくて利益をプールしているだけなら、日本の税務当局に見なされて、その利益に日本の税率を適用して課税されるんだにゃ。要するに、香港で法人税16.5%しか払ってなくても、日本側で差額分を徴収されるってことにゃ。だから単なる節税目的の箱だけ作っても意味がないんだにゃ。



なるほど…。じゃあ香港に会社を作る意味って無いの?



そうでもないにゃ。香港法人にちゃんとした事業の実体があって、現地でオフィスや従業員を持ってビジネスしていれば、この税制の適用を免れる可能性があるにゃ(実質基準の判定がある)。
また香港の税率内で経費を計上して現地に利益を残さないようにすれば日本で課税される利益も減らせるし、そもそも香港の税率自体が日本より低いから全体の税負担を下げる効果は期待できるにゃ。要は形だけの会社じゃなくちゃんと活用することが大事だということだにゃ。
以上のように、香港法人は節税に有利ですが、日本の税制も踏まえた運用が肝心です。香港で得た利益を日本に戻さず現地で再投資する、あるいは香港法人を中間持株会社として活用するなど、適切に香港法人を位置付けることでグローバルな税務最適化が可能です。
もちろん違法な租税回避はできませんが、香港のビジネス環境をうまく使えば日本国内だけでは得られない柔軟な資金活用もできるでしょう。
香港で会社設立した場合のビザ(就労・投資ビザ)
最後に、香港で会社を設立することとビザ(査証)の関係について触れておきます。「香港に会社を作れば自動的に現地に住めるのか?働けるのか?」という点は多くの方が誤解しやすいポイントです。
会社を持っていても、それとビザは別問題です。ただし、自分で設立した会社で働くための投資ビザ(Investment as Entrepreneur Visa)という就労ビザのカテゴリーが用意されています。
投資ビザ(いわゆる企業家ビザ)は、自身が出資・経営する香港法人を通じて香港で事業を行うための就労ビザです。申請するにはいくつか条件があり、例えば十分な事業計画と資金があること、香港経済に貢献する見込みがあることなどを示す必要があります。



具体的には「向こう数年で現地で○人の雇用を創出する」「香港にオフィスを構え、一定額以上の投資を行う」等の計画を提出し、入境事務処の審査を受けます。
また申請者本人の学歴やビジネス経験も問われ、過去に関連分野での実績があることが望ましいとされます。審査ハードルは決して低くありませんが、適切な事業計画を用意すれば十分取得可能なビザです。
初回は2年の就労許可が下り、その後事業の継続状況に応じて3年+3年と更新、7年目以降は永住権の申請資格も得られます。
一方、「会社は作ったが自分は日本在住のまま、必要に応じて出張で香港に行くだけ」という場合、特段香港の長期ビザは不要です。



日本人は香港に90日間までビザなし滞在が認められており、短期出張や会議、取引などは可能です。ただし、香港で報酬を伴う労働をする場合は期間に関わらずビザが必要とされています。



香港で会社を作ったら自動的に香港に住めたりするの?ビザって要らないのかな?



残念だけど会社を作っただけではビザは降りないにゃ。香港で長期滞在して働くには就労ビザ(いわゆる投資ビザ)を別途申請しなきゃいけないにゃ。自分の会社とはいえ、ちゃんと「香港にとって有益な事業をするよ」という計画を出して、入境事務処に認めてもらう必要があるんだにゃ。
逆に言えば、会社設立自体にビザや国籍制限は無いから、日本在住のまま香港法人を所有すること自体は全く問題ないにゃ。
必要な時に香港に出張で来るくらいなら、日本人は90日までビザ無しで滞在できるしね。でも現地で腰を据えてビジネスするつもりなら、早めに投資ビザ申請の準備をするといいにゃ。
香港の会社登記簿謄本の取得方法と法人情報の調べ方
日本では会社の情報(商号や役員、資本金など)を調べる際に「登記簿謄本(現在事項全部証明書)」を法務局から取得しますが、香港にも類似の仕組みがあります。香港の会社情報は会社登記局(Companies Registry)のオンラインサービスを通じて確認・取得することが可能です。
香港会社登記局の提供する Cyber Search Centre(サイバーサーチセンター)では、会社名や会社番号で検索を行い、以下のような情報を得られます。
- 基本情報の無料検索:会社名(英語/中国語)、会社番号、法人種別(有限会社/Public/私的会社など)、設立年月日、登記状況(Active/解散済み等)については無料で検索結果が表示されます。例えば目的の会社が現在存続しているかどうか、設立何年目か、といった基本事項は誰でも確認できます。
- 有料情報の取得:さらに詳細な情報が必要な場合は、有料で書類を閲覧・ダウンロードできます。具体的には会社登記書類(定款、設立申請書、会社設立証明書など)や年次報告書(Annual Return)、役員・株主リスト、登記されている住所、過去の名称変更履歴などが対象です。また清算や裁判所命令に関する書面も取得可能です。必要なものを選択しオンライン決済すれば、その場でPDFを閲覧・保存できます(書面の郵送請求も可)。料金は書類1件あたり数十香港ドル程度に設定されています。



では、日本の登記簿謄本に相当する書類は香港では何にあたるのでしょうか。一般に香港では「年次報告書(Annual Return)」が登記簿謄本に相当すると言われます。
年次報告書には法人名称、法人番号、登録住所、資本金、株主・役員構成、発行株式数などが記載されており、その時点での会社の基本情報を網羅しています。



未上場企業の場合、財務諸表(決算書)は登記されませんが、上場企業であれば決算概要も取得可能です。年次報告書は毎年更新されるため、最新のAnnual Returnを入手すれば「現在事項全部証明書」のような役割を果たすにゃ。
なお香港には「登記事項証明書」という、日本の登記簿謄本に近い形で証明書を出す制度もあります(特定事項を証明したCertificateを発行申請できます)が、一般には年次報告書の方がよく使われます。



香港にも日本みたいな登記簿謄本ってあるの?会社の情報を確認したい時はどうするの?



にゃ、香港では年次報告書(Annual Return)という書類がその役割を果たすんだにゃ。日本の登記簿謄本みたいに法務局で紙の証明書を取るのではなく、会社登記局のオンラインシステムで年次報告書をダウンロードする形になるにゃ。
そこに社名や役員、資本金なんか基本的な情報は全部載ってるから、日本でいう登記簿謄本と同じように信用調査に使えるにゃ。費用も数十香港ドル程度と安いし、すぐ入手できて便利だにゃ。
ちなみに、2022年10月より香港では個人情報保護の観点から、登記閲覧時に表示される役員の個人情報が一部マスキングされるようになりました。
取締役の住所やID番号の一部が非公開化され、許可を得た職業(弁護士や会計士、金融機関など)以外にはフルネーム以外の詳細が見られない仕組みが導入されています。
まとめ:香港法人設立の魅力とポイント
最後に、本記事の内容をまとめます。香港で会社設立を検討するにあたり、以下の点が重要なポイントでした。
- 香港進出の魅力: 低い法人税率(最大16.5%)、シンプルな税制、経済的自由度の高さ、そしてアジア市場への玄関口という地理的利点により、香港は起業・事業拡大の拠点として非常に魅力的です。実際に約1500社もの日系企業が拠点を構えており、日本人起業家にとっても馴染みやすいビジネス環境が整っています。
- 設立手続きの容易さ: オンラインを使った迅速な設立登記が可能で、最短数日で会社を作ることができます。資本金も1HKDから設定でき、株主・役員も1名からOKとハードルは低めです。ただし香港独自の「会社秘書役」や現地住所の要件があるため、実務上は専門の代行業者に依頼して手続きを進めるのが一般的です。代行費用はかかりますが、秘書役や住所の確保も含めワンストップで対応してもらえるため安心でしょう。
- 維持管理とコスト: 香港法人には毎年の商業登記更新、年次報告、監査・税務申告といった維持管理義務があります。ペーパーカンパニーであっても完全に放置することはできず、最低限のコスト(年間10万~20万円程度)は見込む必要があります。他方、シンガポールなど他の国と比べ維持費が安価である点は香港の利点です。事業実体のない会社を設立する場合、日本のタックスヘイブン対策税制に留意し、実質のある運営を心がけることが重要です。
- ビザの検討: 香港で会社を設立しただけでは就労ビザや居住権は得られません。現地で活動するには**投資家向けの就労ビザ(投資ビザ)**を別途申請する必要があります。会社設立と並行して、自身が香港で働く予定がある場合はビザ取得計画も検討しましょう。逆に日本在住のまま香港法人を活用することも可能で、その場合はビジネス出張で香港に訪れる形で十分運営できます。
- 登記情報と信頼性: 香港の会社情報はオープンに近く、オンラインで容易に確認できます。登記上の基本情報(役員や資本など)は透明性が高く、日本の登記簿謄本にあたるAnnual Returnを取得すれば取引先の実態を把握する助けになります。香港法人との取引では、相手企業がペーパーカンパニーでないかどうか、必要に応じて登記情報や現地の様子をチェックすることもビジネス上のリスクヘッジとなります。
もちろん海外で会社を運営するには日本国内とは違った課題も出てきますが、香港の場合、日本語で対応できる専門家やサービスも豊富です。



初めての海外進出でも比較的取り組みやすい場所と言えるでしょう。ぜひ本記事の情報を参考に、香港での会社設立・起業プランを具体化してみてください。低い税率とビジネスの自由を武器に、香港法人を活用したグローバルな事業展開が実現できることを願っています。


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